街をパトロールしていた小狼は商店街にやってくるとしばらく街並みを眺めていました。今日は日曜日の午後なので商店街はたくさんの人で賑わっています。
(キックしたら面白いだろうなぁ…)
街を眺めているうちに小狼は段々と破壊衝動に駆られてきました。小狼は街を怪獣から守る正義の味方です。そんなことができるはずがありません。ですが、自分の圧倒的なパワーで街を破壊することに快感を感じているのでした。
(もうガマンできないや!)
小狼は商店街の入り口に仁王立ちになると両手に腰をあてて深呼吸をすると叫びました。
「この商店街に極悪エイリアンが隠れているぞ!10数えたら攻撃を開始する!」
パニックに陥った商店街を見下ろしながら小狼はカウントを始めました。
「い〜ち、に〜い…」
小狼の足元は逃げ惑う人々で大変な騒ぎになっていますが、小狼はまったく気にする様子もなくカウントを続けていきます。多くの人が建物に逃げ込んでいくのが見えますが小狼は薄笑いを浮かべました。
(逃げても無駄無駄…みんなにスライドキックを味あわせてやるよ…)
スライドキックは片手片足を軸にして地上スレスレに半円を描きながら凄まじいスピードで繰り出すキックで小狼の足の長さである半径60m以内のすべての物体を一瞬にして粉砕する小狼の得意技です。
先日の戦闘では小狼の足首にも満たない小さな怪獣が住宅街に逃げ込んだのですが、小狼はこのスライドキックを次々と炸裂させて怪獣を退治したのでした。もちろん、住宅街は跡形もなく潰滅してしまいました。
(商店街にスライドキックは初めてだなぁ…)
小狼はカウントしながら自分のキックでメチャメチャになっていく商店街を想像すると興奮するのでした。
「…きゅ〜っ、10っ!」
数え終わると同時に小狼はゆっくりと腰を降ろすと何もためらうことなく、商店街に向けて右足でスライドキックを炸裂させました。
激しい音と砂煙を巻き上げながら小狼のキックはちょうど建物の3階部分を直撃しました。
5〜6階建ての雑居ビルは小狼の足で真っ二つに引きちぎられ、またキックの直撃を免れた2〜3階建ての商店は激しい衝撃波を受けてまるで紙クズのようないびつな形に変形して潰されていきます。
こうして凄まじい破壊力を持った小狼のキックは、100あまりの雑居ビルや店舗を一瞬のうちに捕らえて粉砕していきます。
(ははっ!オレのキックでメチャメチャにしてやったぜ!)
一撃で商店街を地獄に変えてしまった小狼ですが、まだまだ物足りないようです。
「あれっ?見つかんないぞ!こっちか?」
そう言うと小狼は今度は通りをはさんで反対側の商店街に左足でスライドキックを撃ち込みました。激しい音とともに小狼の左足が街並みを舐めていくとそこにあった全ての建物はなすすべもなく吹き飛ばされ潰されていきました。
「逃がさないぞっ!それっ!」
こうなるともう誰にも小狼を止めることはできません。小狼は商店街に向けて次々とスライドキックを撃ち込んでいきます。商店街は僅か数分で跡形もなく粉砕されてしまいました。
キックを終えた小狼は立ち上がると煙が立ち込める破壊し尽くされた商店街を見て満足そうな表情をしました。
「怪獣を退治したぞ!もうこれで大丈夫だ!」
そんな小狼の声を確認できる人は誰もいませんでした。
2002/02/27