小狼がいつもように街中をパトロールをしていると大きな小学校を見つけました。小狼は足元に注意しながら校庭に入り込むとゆっくりとしゃがみました。そしてニッコリと笑いながら校舎に向かって手を振り始めると、突然現れた巨大なヒーローに学校中が大騒ぎになりました。授業どころではなくなった生徒達は窓際に集まってくると、巨大な小狼の姿を見て驚いたり手を振ったりしています。
小狼は怪獣からこの星を守る正義のヒーローですが、最近は自分の圧倒的な力で一瞬のうちに街の人たちを抹殺することに快感を覚えるようになっていました。窓辺に集まっている小学生達を見ているうちに小狼は段々と殺意を覚えてきました。自分が最優先で守らなければならない最も弱い存在を自ら手にかけることは正義のヒーローとして許されない行為ですが、してはいけないと思えば思うほど小狼は興奮してくるのでした。
その時、小狼は怪獣の気配を感じました。振り返ると遠くに怪獣が現れ、街中で暴れ始めています。小学校を目の前に迷っていた小狼ですが怪獣が現れたことでふっ切れました。
「みんなっ!怪獣が現れたぞ!ここはもうすぐ戦場になるから早く体育館に避難するんだ」
小狼の声を聞いて生徒達はパニックになりました。これではとても避難どころではありません。困った小狼は生徒達を落ち着かせるように言い聞かせました。
「落ち着くんだ!オレが怪獣をやっつけてやるから安心しろよ!さぁ、体育館に避難しろ」
正義のヒーローの声を聞いて安心したのか生徒達は落ち着きを取り戻すと先生達に引率されて校庭に出てきました。小狼は立ち上がって体育館を一跨ぎすると校庭を見下ろしました。生徒達は巨大な小狼の立ち姿を恐々と見上げながら体育館へ吸い込まれていきます。この小学校は1学年平均6クラスで総勢1500人あまりの生徒がいましたが、僅か5分で全校生徒の避難が終わりました。
「戦いが終わるまでそこでじっとしてるんだぞ!」
小狼は生徒達によく聞こえるように体育館の真上で喋りました。
「さてと…まずは脅かしてやるか」
小狼は怪獣の位置を確認しましたが、まだ怪獣は小狼には気が付いていないようです。小狼は体育館を跨いだまま勢い良く足踏みを始めました。物凄い地響きとともに体育館が揺らぎ始めます。窓ガラスは割れて飛び散り、屋根についていた照明器具も落下しました。中にいる生徒達はまるで大地震に襲われたような感覚で、激しい揺れに年少学年の生徒達は弾き飛ばされ泣き始める者が多数でした。生徒達は外で何が起こっているのかは知るよしもなくただ揺れに耐え続けていました。体育館から漏れてくる悲鳴を聞きながら小狼は薄笑いを浮かべました。
「じゃ、そろそろいくか…」
そう言うと小狼は左足を体育館の屋根に乗せると何もためらうことなく一気に踏み込みました。凄まじい音とともに鉄板の屋根が引きちぎれ小狼のスパイクが体育館を踏み抜きました。その破壊力は凄まじく体育館の鉄骨や壁は粉々に粉砕されてしまいました。それと同時に激しい悲鳴が上がります。
「ははっ!お前らみたいな弱いやつは、みんなオレが踏み潰してやるぜ!」
続いて小狼は右足で体育館を踏み込みました。足元からさらに激しい悲鳴が湧き上がります。興奮してきた小狼は左足を上げるとまだ壊れていない部分に踏み込みました。
「おらおらっ!」
小狼は体育館の上で足踏みを始めます。小狼のスパイクが踏み下ろされるたびに生徒達の悲鳴が上がりましたが、小狼の足踏みはそれに答えるかのようにますます激しくなっていきます。興奮を押さえられなくなった小狼は体育館の上でジャンプを始めました。両足で着地するたびに粉砕された鉄骨や壁の破片が四方八方に飛び散ります。もちろんほとんどの生徒達も粉砕されてしまいました。凄まじい小狼の攻撃によって体育館は僅か1分でもう原型を留めていませんでした。
「なんだ!もう終わりか」
小狼はジャンプをやめるとスパイクでメチャクチャになった体育館を踏みにじり始めました。運良くガレキの片隅にかろうじて生き残っていた生徒達は逃げる場所がなくなり小狼のスパイクで一人残らず粉砕されていきます。こうして小狼は全校生徒を体育館ごと踏み潰してしまいました。小狼は悲鳴が聞こえなくなったのを確認すると攻撃を止めました。
「さてと、そろそろ怪獣退治しなきゃな!ついでにこの街も潰しとくか…」
小狼は怪獣をおびき寄せると攻撃を始めました。数発のキックで倒せる怪獣でしたが、小狼は証拠隠滅のために学校周辺の街をワザと戦場にしてキックやクラッシュで建物を徹底的に破壊し尽くしていくのでした。
2004