<ひさびさのトライアスロン編>
パトロールのため街の中心部にやって来た小狼はデパートに気がつきました。
それは街の中でも一番大きなデパートで小狼は中腰になって中を覗き込みます。
小狼の目はデパートの最上階のレストラン街に釘付けになりました。
今日は夏休みの休日でちょうどお昼過ぎということもあり、多くの家族連れが食事を楽しんでいます。
(みんな楽しそうだなぁ)
小狼がニコリと笑って手を振ると食事をしていた人々の視線はデパートを覗き込む巨大な少年に注がれました。
ニコニコと笑う小狼でしたが、心の中は穏やかではありませんでした。
小狼はこの街を守る正義の味方ですが、自分の圧倒的な破壊力を街の人々に見せつけることも大好きでした。
守らなければならない人々を一瞬のうちに抹殺してしまうことに快感を覚えるようになったのです。
ピカピカに磨かれたガラス窓を見ているうちに小狼は段々と破壊衝動に駆られてきました。
(ああ…どうしようかな…でも…)
その時、たくさんの子供達が窓際に駆け寄ってきて突然現れた巨大なヒーローに手を降り始めました。
小狼もそれに答えるように手を振り返します。
(もうダメだ…)
小狼の我慢は限界を超えてしまいました。
「今日は良い子のみんなに特別にオレのボレーキックを味あわせてあげるよ!」
突然の小狼の宣戦布告にデパートのレストラン街は大混乱になりました。
テーブルやイスがひっくり返り、大勢の人たちが逃げ始めています。
「ははっ、俺のキックからは逃げられるとでも思ってるの?」
小狼は薄笑いを浮かべながら中腰の姿勢から立ち上がるとデパートを見下ろしました。
そして少し股を開いて道路に膝をつきました。
小狼は一息すると上半身の振りに合わせてすっと右足を後ろに伸ばします。
「喰らえっ!」
次の瞬間、小狼はスラリと伸びた右足でデパートを思いっきり蹴りつけました。
凄まじい破壊力を持った小狼の右足が猛スピードでデパートにめり込むと、ほとんどのガラスが砕けて飛び散りました。
そして、ほぼ水平に撃ちこまれた小狼の右足はレストラン街のフロアをなめるように粉砕していきました。
「オレのボレーキックの破壊力はどうだ?」
小狼は起き上がるとメチャメチャになったレストラン街を満足そうに見下ろしました。
立ち上る煙の中、2フロアあったレストラン街は跡形もなくちぎれた柱や壁が無残な姿を晒しています。
「もうこのデパートは使えないな…ついでに片付けてやるよ」
小狼は右足でデパートの側面を思いっきり蹴りつけると、デパートの1/3は吹き飛び、建物は大きくきしみ歪んでいきました。
小狼はデパートに食い込んだ右足を引き抜くと、今度は左足で蹴りつけました。
砂塵を巻き上げながらデパートは崩壊していきます。
「とどめだ!」
小狼は残った低層階を次々とスパイクで踏み砕いていきます。
その破壊力は凄まじく、地下街までも完全に踏み潰していきました。
こうして数分もしないうちに数千人の人々共にデパートは小狼によって完全に粉砕されてしまいました。
2003/08/24