第1話
へんしん (09/12) 01/08/17

「なぁ〜んだ、楽勝じゃん♪」
怪獣が倒れて気が緩んだ時、風栗は初めて周囲を見まわす余裕ができました。
ふと足元に目線を移してみると、その光景に風栗は声を失いました。
「………」
そこにはおよそ信じられない惨状が広がっていたのです。
激しいキック攻撃を何度も繰り返したために
駅から学校に続く街並みは風栗によってメチャメチャに踏みにじられていたのです。
いつも愛想のよかったハンバーガー屋さんのお姉さんや、
仲良しだったゲームセンターのお兄さんの顔が風栗の脳裏に浮かびました。
いや、もっとたくさんの人達がこのガレキの下に埋まっているのかと思うと、
さっきまで鋭いキックを決めていた足はすっかり凍りついてしまいました。
初めて変身してどうしてよいのか分からないまま、怪獣を倒す事だけに
気を取られていた風栗は、とても足元まで気を配る余裕はなかったのです。
そして巨大化した自分が街中を走り回ると、どんな事態になるのかもよく分からなかったのです。
風栗は泣き出しそうになるのをこらえて呆然と立ちつくしていました。
その時、倒れている怪獣の目が鈍く光りました…




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