第2話
ちからだめし (03/09) 01/10/09


風栗は駅を出ると人目を気にしながら歩道橋の影に入り巨大化しました。
周囲の建物を壊さないように注意して変身しましたが、
足元を見ると客待ちをしていたバスやタクシーを数台踏み潰していました。
「あ、やっちゃった…」
ですが風栗はこれから自分がしようとしていることを思うと気にもとめませんでした。
夕方のラッシュが始まりかけた街は、突然現れた巨大な少年で大騒ぎになりました。
風栗は一呼吸置いてから叫びました。
「みなさ〜ん!ボクはブルーキャットといいま〜す!」
ブルーキャットというのは風栗がこの街に来るときに電車の中で考えた変身後の名前でした。
テレビではネコミミ少年とか巨大少年とか勝手に名前を付けられていたので
風栗はハッキリさせた方がいいと思ったのです。
「この街に凶悪なエイリアンが小さくなって隠れていま〜す!」

風栗の声変わり前の高い声が風に乗って街中に響き渡ります。

「これからボクが退治するので〜ケガをしたくない人は急いで逃げてくださ〜い!」
風栗はあまりウソが上手な方ではなかったのですが、精一杯ウソをつきました。
すると、風栗の足元に集まっていたやじ馬たちはクモの子を散らすように一斉に走り出しました。
「宣戦布告をしておかないとね…」
一応、自分は正義のヒーローだということをわきまえているつもりでした。




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