やっとのことで濁流から抜け出した風栗は近くの尾根に這い上がりました。
そこからは自分の住んでいる街が一望できます。
「……!」
その光景を見て風栗は声を失いました。
ダムの下流にあたる市内を流れる川は、まるで黄色の巨大な竜のように街に横たわっています。
今まさに堤防が決壊して市街地に濁流が流れ込んでいるところでした。
橋や鉄橋は押し流され、ビルや家屋が次々と濁流に流されていきます。
「うわ…すごいや」
まるで人事のように見ていた風栗ですが、やがて濁流が自分の家の方に迫ると我に返りました。
「大変だぁ!家が流されちゃうよぉ!」
風栗は勢いよく飛び出すと、街まで一目散に走っていきました。