第8話
きょうそう (05/08) 03/05/25


「じゃ、位置についてよ…」
風栗はブラックキャットに呼びかけるように言いました。
街は静まり返り2人の間に緊張が走ります。不安をかき消すかのように風栗は大きく息をつきました。

「よぉ〜い…スタートっ!」
風栗の高めの声が街中に響き渡ると、戦いの火蓋は切って落とされました。
「えいっ!」
スタートと同時に風栗は足元のビルを踏みつけて走り始めました。
踏みつけられたビルは一瞬のうちに崩壊していきます。
およそ正義の味方にあるまじき行為ですが、目標のクレーンまでの最短コースをたどることで
風栗は街に与えるダメージを最小限に押さえようとしたのでした。
(うわわ…ごめんなさいっ…)
足元で次々とメチャメチャになって潰れていくビルを見ながら風栗は心の中で謝るのでした。
そんな風栗を尻目に見ながらブラックキャットは余裕の表情で大通りを駆け抜けていきます。
「バカだな…アイツ。 遠回りでも道路を走ったほうが早いに決まってるじゃないか」
風栗は膝下に広がるビル群を派手に蹴散らして走っていますが、
まさに障害物破壊競争といった感じで全速力にはほど遠いスピードです。
「この勝負、もらったぜ!」
ブラックキャットは大きな交差点を曲がるとクレーンに向けてラストスパートをかけました。




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