第11話
にせもの (03/10) 04/12/14


「いくぞ! 風栗」
マンクスは風栗に目でサインを送ると巻かれた耳に手をかけました。

「えっ!? ちょっとマンクス! ここ電車の中だよっ!」
風栗の静止も聞かずにマンクスは巻いてあった耳をほどきました。
マンクスは頭に耳を巻きつけると地球人サイズになり、耳を振りほどくと元の巨大な姿に戻れるのです。
マンクスの体は次第に淡い光に包まれてゆっくりと巨大化を始めます。
「うわわっ!!」
このままだと風栗も巨大化しないとマンクスの体に押し潰されてしまいます。
ですが、ここは走行中の電車の中です。
風栗は急いで車内を見回しましたが、まだ夕方のラッシュ前ということもあり、
この車両には20人足らずの乗客しかいません。
しかも、ほとんどの乗客は窓の外に広がる光景に目が釘付け状態で、
巨大化を始めたマンクスにすら気が付く人はいませんでした。
少し安心した風栗はカバンの中からカチューシャを取り出しました。
「ごめんなさい…」
風栗は小声で謝るとカチューシャを頭にセットしました。




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